みずば霊魂学
霊的世界に関して初心者向けの内容です
霊的な真実を探求しています
最近流行りのシルバーバーチなどのスピリチュアリズムの主張とは異なっています
また、「テレビ等では高級な霊魂現象は起きない」と主張しております
統一教会とは一切関係がありません
水波一郎師 監修
2014.01.10

川上聡さん(仮名) ※本人の画像ではありません
<ある霊魂の他界後の足跡を、なるべく分かりやすいように、物語風に記述します>
彼は死後の世界を信じてはいなかった。
そんな川上が他界したのは病院のベットの上であった。
川上が他界した時は、なぜか何も分からず、しばらくは夢を見ていた。
夢から覚めた時、彼はなぜか見知らぬ場所にいた。一度も見たことのない景色に戸惑ったのだが、それよりも自分がなぜそこに居るのか分からなかった。
どうして良いのかも分からず、しばらくぼうっと立っていた。
それからしばしの時が流れた。
急に、自分は病院にいたはずだ、と思うようになり、なぜ、病院にいないのか、と考えた。その上、彼の体は一人で立てるはずがなかった。彼は自分が死んだのではないかと疑っていた。
彼が自分の死に気が付いたのはそれからすぐであった。
歩いてみると感触が違うのである。なんとなく変なのである。おまけに足が痛くない。
その上、地面に触ってみても何か違うのである。
彼は自分が死んだと知り、一層戸惑うことになった。
これからどうして良いのか分からなかったのである。
見たところ、神や仏が迎えに来ている様子もない。回りには何の建物も見えない。(砂漠でもあるまいし、いったいどこなんだろう。)
彼の不安はどんどん募っていった。
ただ、立っていてもどうにもならない。そう考えた川上はとぼとぼと歩きだした。どれだけ歩いても何もない。
このままでは死んでしまう、そう考えてはっとした。彼はすでに死んでいたのであった。
「食事や住まいはどうなるのだろうか。」
彼はとにかく誰かに会いたかった。
いくら歩いても無駄だと考えた川上は立ち止まって叫んだ。
「神さまーー、助けてください。」
しかし、誰も答えてはくれなかった。
不思議なことに川上の目には太陽も映っているし、山も映っているのだが、動いているものが一つもないのである。
せめて動物でもいないものか、そう思って回りを見回してもみるが、居るのは自分だけなのであった。
やがて、夜になる時間が来た。それなのに太陽の位置は変わらない。
「どうしてなんだ。一体どうなっているんだ。」
川上はもう気が狂いそうになっていた。
それでも何一つ変わることもなく、どんどん時間だけが過ぎて行った。それなのに、なぜか腹は減らず眠くもならない。
川上はこの時初めて、宗教を信じていれば良かった、そう本気で思ったのであった。
どれだけの時間が流れたのか、彼にはさっぱり分からなかった。
一日の境がなく、一日中昼なのである。何をするでもなく、彼はただ、寝そべっていた。
テレビもなく、話し相手もいない。襲ってくる獣さえいない。
草木は見当たらないし、気を紛らすものが何もないのである。
せめて、自分の置かれている状況が分かっていれば、それでも安心していられるかもしれない。
ところが、何も分からないのである。
これから一体どうなってしまうのか、彼はすでに心の安定を保てなくなっていた。
随分と長い時間が経った。
彼はまだ、そこにいた…。
2014.01.10

山本 泉さん(仮名) ※本人の画像ではありません。
<ある霊魂の他界後の足跡を、なるべく分かりやすいように、物語風に記述します>
彼女は若くして自殺した。彼女はノイローゼだったようで、死んでもしばらくの間は笑うことさえなかった。
そのためか、何かと後ろ向きに思考し、積極性を失い、死後の世界の住人となっても、誰とも話そうとしないのであった。
彼女が入った世界は街であった。いろいろな形の家が並んでいて、霊魂も大勢住んでいた。
その上、他の霊達も気軽に声をかけてくれるのであった。
それでも彼女はうつむいたままで、何やら物思いに耽っていた。
とはいえ、ここは霊魂の世界である。地上とは勝手が違う。
食事もいらなければ、寝ることもない。おまけにどの家に入っても誰も文句を言わないのである。
ある時、彼女は思い切って聞いてみた。
「ここはどうして、誰も私に文句を言わないのですか。」
ある女性の霊魂が教えてくれた。
「あなたは、まだ来たばかりで、何も知らないのでしょうけど、ここの生活は思っただけで何でも出てくるのよ。」
「えっ。」
泉が驚くと、女性は笑いながら答えた。
「あなたのいた世界は物でできているから、家を建てるのは大変なのよ
」
「でもね、ここは物質では出来ていないの」
「だから、念じるだけですぐに家が建つのよ。欲しいと思えば何でも手に入るの。だから、泥棒もいなければ警察もいらないのよ」
「何しろ、誰かに取られてもまたすぐに作れるのよ」
「でも、土地は自分の物じゃあないんですか。」
「ほっほっほっ。」
女性は口に手を当てて笑うのであった。
「土地なんて物はないの。地面はあなたに地面と見えているだけなの。まあ、そのうち、ゆっくり覚えるといいわ。最初は皆、戸惑うのよ。」
泉は、付いていけない、という感じがした。ただし、ここは地上とは全く違う世界なんだ。それだけははっきり分かったのであった。
それから、どれだけかの時が流れた。泉は笑顔で霊魂たちと語っていた。まるで別人のようであった。
*自殺を推奨しているわけではありませんので、誤解のないようにしてください。
山本泉(仮名)さんのように自殺したからといって、必ず苦しみの世界に落ちるということはないようです。
ですが、最近はほとんどの人が下の世界に落ちているという情報も入っています。
自殺であれ、病死であれ、他殺であれ、霊魂の世界の法則としては、単に肉体から幽体が分離し、霊魂の世界に入るという現象にすぎませんので、死に方は本来行くべき世界とは関係がありません。
ですが、自殺するほどに追いつめられる過程においては、不道徳な霊魂に干渉されていたり、他の人から強い恨みや攻撃的な念を受けていたり、といった霊的障害を抱えていることが大変多いようです。
ですから、そうした人は、結局、苦しみの世界に入ってしまいます。
特に最近は、この世界は霊的な環境が悪いようで、ほとんどの人は幽体に力がないようです。
そのような状態で死を迎えると、病死の人ですら苦しみの世界に入る可能性がありますので、霊的障害を抱えた人はなおさら辛い思いをする可能性があります。
世の中には、自殺というと、「神の罰が当たる」的な発想をする人がいますが、それは霊魂学的には間違っています。
ですから、山本泉(仮名)さんの例を掲載しました。
それでも現実には、自殺するとかえって苦しむ人がほとんどですので、何とか生きる方向に考えてほしいと思っております。そして霊魂も、一生懸命生きること、を勧めています。
2014.01.10
霊魂の世界には霊術という技術を用いる人達がいらっしゃいます。
困っている人のために、祈祷をしたり、中には呪いをかけたりする人までいるそうです。
今回は、そうした霊術に関する話をご紹介します。
この話は霊魂から聞いた話です。本当にあった話かどうかは私には分かりません。
いずれにしても、霊魂からのメッセージが強く感じられると思います。
ある女性の霊術家が年を取って病気に勝てなくなりました。
まわりには、世話になったという人達が大勢集まっていました。
病気を祈祷してもらった人もいれば、受験を祈願してもらった人もいて、顔ぶれは実に様々でした。
やがて、お葬式も終わり、人々も霊術家のことを少しずつ忘れて行きました。
そんなある日の事でした。霊術家はかつていた家に戻って来ました。
どうやら、地上に残した家族の事がよほど気に掛かったようで、霊魂の世界の先輩の注意を無視して、地上に戻ってしまったのでした。
霊魂というものは住み慣れた家が分かるのか、その霊術家は、結局、自宅の玄関に立つ事ができたのでした。
それからというもの、この霊術家は深い溜め息ばかりつくことになりました。
別居していた家族は早くも自分のことを忘れてしまい、あれほど親身になって相談に乗ってあげた人達はといえば、こともあろうに、他の霊術家の元に通っているのでした。
自分は死んだのだから、仕方がないようなものですが、相談者の中には、この霊術家の悪口を言っている者さえいたのでした。
(恩も何もないものだ。ろうそく代程度で祈祷してやった者さえいるのに、死んでしまえばこのざまか)
霊術家は心底怒ったのでした。
それから、霊術家の復讐が始まりました。
まずは、恩を忘れて悪口を言った中年の女性でした。
霊術家の霊魂はしつこく付きまとい、チャンスを狙いました。
そして、ある時、スッと、その女性の身体に入ったかと思うと、いきなり、その人の夫に悪口を言いました。
もっとも、霊魂はすぐに人の口など使えません。
女性の口は霊魂が思った通りには動きませんでした。
それでも、結果としては、大げんかになりました。
そして、霊術家の霊魂の復讐が完了しました。
中年の女性は夫と離婚し、その後、各地を転々としているうちに消息が分からなくなりました。
ところが、霊術家の心は一つも満たされていませんでした。
今度は、生前、自分の事をまるで詐欺師であるかのように言って、近所に悪い噂を流した「あの女」の番でした。
霊術家は困っている人の為と思い、料金も決めずに志程度で奉仕していました。
ところが、いつの頃からか、世間から白い目で見られるようになり、そのために、家族から嫌がられ、孫が学校で苛められるから仕事を辞めてくれ、とまで言われていたのでした。
そのため、息子夫婦と折り合いが悪くなり、結局、別居して一人で暮らしていたのでした。
霊術家は、世の為人の為、と思い、仕事をしてきました。
死ぬまで贅沢などできませんでした。他人の喜ぶ姿を見て誇りを感じていたのです。
それなのに、気が付けば近所で陰口を言われ、孫が学校へ行きたがらず、わが子からは嫌がられ、孤独に耐えながらこの世を去ったのでした。
その上、あれほど真剣に祈祷し、一緒に悩み、まじめに相談に乗ってあげた人達は自分を裏切り、また、陰口を言った者達は、宗教や霊能力者は本当は詐欺師だ、と言って笑っているのです。
驚いたことに、霊魂なんている訳ない、と霊能力者を変人扱いし、馬鹿にしているのです。
霊術家の霊魂の心は爆発してしまい、もはやとどまることがありませんでした。
霊魂にとっては地上とは時間の感覚が違うのか、それとも心が変わりにくいのか、とにかく、怒りの感情は激しくなるばかりでした。
そんな時でした。
霊術家の霊魂はかつての相談者の後を付けていた時、ある高級な霊魂の部下に出会えたのでした。
この出会いがなければ、霊術家の霊魂の心は長く晴れることはなかったに違いありません。
何はともあれ、一人の霊魂が救われたのでした。
しかし、それでも、この霊魂は顔をくしゃくしゃにして上位の霊魂に訴えました。
「あんな奴らを神仏はどうして懲らしめようとなさらないのですか」
上位の霊魂は答えました。
「私達もその事は感じています。上の方々に必ず伝えておきます」
霊術家の霊魂は行くべき世界へと戻りました。
さて、今の世の中はこのままで本当に良いのでしょうか。
高級霊魂達は、どう思っていらっしゃるのでしょうか。
私の問に、監修者(水波一郎師)がこう答えました。
「自分でまいた種は自分で刈り取らねばならない、と、かつてイエスが言っている」
困っている人のために、祈祷をしたり、中には呪いをかけたりする人までいるそうです。
今回は、そうした霊術に関する話をご紹介します。
この話は霊魂から聞いた話です。本当にあった話かどうかは私には分かりません。
いずれにしても、霊魂からのメッセージが強く感じられると思います。
ある女性の霊術家が年を取って病気に勝てなくなりました。
まわりには、世話になったという人達が大勢集まっていました。
病気を祈祷してもらった人もいれば、受験を祈願してもらった人もいて、顔ぶれは実に様々でした。
やがて、お葬式も終わり、人々も霊術家のことを少しずつ忘れて行きました。
そんなある日の事でした。霊術家はかつていた家に戻って来ました。
どうやら、地上に残した家族の事がよほど気に掛かったようで、霊魂の世界の先輩の注意を無視して、地上に戻ってしまったのでした。
霊魂というものは住み慣れた家が分かるのか、その霊術家は、結局、自宅の玄関に立つ事ができたのでした。
それからというもの、この霊術家は深い溜め息ばかりつくことになりました。
別居していた家族は早くも自分のことを忘れてしまい、あれほど親身になって相談に乗ってあげた人達はといえば、こともあろうに、他の霊術家の元に通っているのでした。
自分は死んだのだから、仕方がないようなものですが、相談者の中には、この霊術家の悪口を言っている者さえいたのでした。
(恩も何もないものだ。ろうそく代程度で祈祷してやった者さえいるのに、死んでしまえばこのざまか)
霊術家は心底怒ったのでした。
それから、霊術家の復讐が始まりました。
まずは、恩を忘れて悪口を言った中年の女性でした。
霊術家の霊魂はしつこく付きまとい、チャンスを狙いました。
そして、ある時、スッと、その女性の身体に入ったかと思うと、いきなり、その人の夫に悪口を言いました。
もっとも、霊魂はすぐに人の口など使えません。
女性の口は霊魂が思った通りには動きませんでした。
それでも、結果としては、大げんかになりました。
そして、霊術家の霊魂の復讐が完了しました。
中年の女性は夫と離婚し、その後、各地を転々としているうちに消息が分からなくなりました。
ところが、霊術家の心は一つも満たされていませんでした。
今度は、生前、自分の事をまるで詐欺師であるかのように言って、近所に悪い噂を流した「あの女」の番でした。
霊術家は困っている人の為と思い、料金も決めずに志程度で奉仕していました。
ところが、いつの頃からか、世間から白い目で見られるようになり、そのために、家族から嫌がられ、孫が学校で苛められるから仕事を辞めてくれ、とまで言われていたのでした。
そのため、息子夫婦と折り合いが悪くなり、結局、別居して一人で暮らしていたのでした。
霊術家は、世の為人の為、と思い、仕事をしてきました。
死ぬまで贅沢などできませんでした。他人の喜ぶ姿を見て誇りを感じていたのです。
それなのに、気が付けば近所で陰口を言われ、孫が学校へ行きたがらず、わが子からは嫌がられ、孤独に耐えながらこの世を去ったのでした。
その上、あれほど真剣に祈祷し、一緒に悩み、まじめに相談に乗ってあげた人達は自分を裏切り、また、陰口を言った者達は、宗教や霊能力者は本当は詐欺師だ、と言って笑っているのです。
驚いたことに、霊魂なんている訳ない、と霊能力者を変人扱いし、馬鹿にしているのです。
霊術家の霊魂の心は爆発してしまい、もはやとどまることがありませんでした。
霊魂にとっては地上とは時間の感覚が違うのか、それとも心が変わりにくいのか、とにかく、怒りの感情は激しくなるばかりでした。
そんな時でした。
霊術家の霊魂はかつての相談者の後を付けていた時、ある高級な霊魂の部下に出会えたのでした。
この出会いがなければ、霊術家の霊魂の心は長く晴れることはなかったに違いありません。
何はともあれ、一人の霊魂が救われたのでした。
しかし、それでも、この霊魂は顔をくしゃくしゃにして上位の霊魂に訴えました。
「あんな奴らを神仏はどうして懲らしめようとなさらないのですか」
上位の霊魂は答えました。
「私達もその事は感じています。上の方々に必ず伝えておきます」
霊術家の霊魂は行くべき世界へと戻りました。
さて、今の世の中はこのままで本当に良いのでしょうか。
高級霊魂達は、どう思っていらっしゃるのでしょうか。
私の問に、監修者(水波一郎師)がこう答えました。
「自分でまいた種は自分で刈り取らねばならない、と、かつてイエスが言っている」
2014.01.17
〈ある霊魂の他界後の足跡を、なるべく分かりやすいように、物語風に記述します〉
死後の世界は不思議な世界です。
地上のような物質の世界ではないので仕組みが違います。
そのために、幸、不幸も地上の感覚で考えてはいけないようです。
静雄(仮名)は社会的な地位があった。
そのため、生活は贅沢で威張り散らし、見栄っ張りで、人に嫌われている方であった。
そんな静雄にもやはり死ぬ時が来た。
静雄は若い時は死後の世界など馬鹿にしていたが、老いてからは、頻繁に仏壇の前に座っていたのであった。
静雄が落ち着いた場所は、死後の世界としては標準的なのか、地獄といった感じもしないし、天国といった感じでもないのであった。
ある時、静雄は先輩の霊魂に尋ねた。
「俺は将来、極楽に行けるかのう」
先輩が答えた。
「それはわしにも分からん。わしはここに長いが、ここから居なくなった者も少ないし、居なくなってからの事は分からんから、何とも言えんのう」
「なんか、情報はないのかのう」
「ないなあ。皆、極楽なんて考えるのは、最初のうちだけじゃから」
静雄はがっかりした。
頭も良く、地位も名誉もあり、老いては寺に力を入れていた静雄としては、もし仮に死後の世界があったら、極楽の方に行きたいと願っていたからである。
静雄は決心した。
皆が止めるのも聞かず、極楽を探しに行く事にしたのであった。
静雄の長い旅が始まった。
とは言っても、別に食料がいるわけでなし、足も老人のはずなのに、ちっとも疲れないのであった。
どれだけ経ったのであろうか。
静雄は途中で休んでいた。
いや、疲れたわけでもないので、気分転換をしていたのである。
そこへ、一人の男性の霊魂が現れた。
「そこの人、どこへ行かれるのですか」
静雄は答えた。
「極楽という所をいっぺん見てみたいと思うてのう」
「それなら、私の後について来なさい。極楽かどうかは分かりませんが、ずいぶん偉い人が居るという場所を知っていますよ」
「そうか、それはありがたい。」
静雄は飛び上がらんばかりであった。
長い時間が経った。
静雄はある恐ろしい霊魂の部下として、毎日絞られていた。
「辛い! 辛い! 逃げたい! ほとけさまー!」
静雄の悲しい叫びは誰にも届かないのであった。
この人は無知なるがゆえに、悪い霊魂に騙されてしまい、取り返しがつかない失敗をしてしまったのでした。
どこの世界でも、悪い人は、まるで善人のような顔をして寄って来るのかもしれませんね。
死後の世界は不思議な世界です。
地上のような物質の世界ではないので仕組みが違います。
そのために、幸、不幸も地上の感覚で考えてはいけないようです。
静雄(仮名)は社会的な地位があった。
そのため、生活は贅沢で威張り散らし、見栄っ張りで、人に嫌われている方であった。
そんな静雄にもやはり死ぬ時が来た。
静雄は若い時は死後の世界など馬鹿にしていたが、老いてからは、頻繁に仏壇の前に座っていたのであった。
静雄が落ち着いた場所は、死後の世界としては標準的なのか、地獄といった感じもしないし、天国といった感じでもないのであった。
ある時、静雄は先輩の霊魂に尋ねた。
「俺は将来、極楽に行けるかのう」
先輩が答えた。
「それはわしにも分からん。わしはここに長いが、ここから居なくなった者も少ないし、居なくなってからの事は分からんから、何とも言えんのう」
「なんか、情報はないのかのう」
「ないなあ。皆、極楽なんて考えるのは、最初のうちだけじゃから」
静雄はがっかりした。
頭も良く、地位も名誉もあり、老いては寺に力を入れていた静雄としては、もし仮に死後の世界があったら、極楽の方に行きたいと願っていたからである。
静雄は決心した。
皆が止めるのも聞かず、極楽を探しに行く事にしたのであった。
静雄の長い旅が始まった。
とは言っても、別に食料がいるわけでなし、足も老人のはずなのに、ちっとも疲れないのであった。
どれだけ経ったのであろうか。
静雄は途中で休んでいた。
いや、疲れたわけでもないので、気分転換をしていたのである。
そこへ、一人の男性の霊魂が現れた。
「そこの人、どこへ行かれるのですか」
静雄は答えた。
「極楽という所をいっぺん見てみたいと思うてのう」
「それなら、私の後について来なさい。極楽かどうかは分かりませんが、ずいぶん偉い人が居るという場所を知っていますよ」
「そうか、それはありがたい。」
静雄は飛び上がらんばかりであった。
長い時間が経った。
静雄はある恐ろしい霊魂の部下として、毎日絞られていた。
「辛い! 辛い! 逃げたい! ほとけさまー!」
静雄の悲しい叫びは誰にも届かないのであった。
この人は無知なるがゆえに、悪い霊魂に騙されてしまい、取り返しがつかない失敗をしてしまったのでした。
どこの世界でも、悪い人は、まるで善人のような顔をして寄って来るのかもしれませんね。
2014.01.17

〈ある霊魂の他界後の足跡を、なるべく分かりやすいように、物語風に記述します〉
和夫(仮名)は若くして他界した。
交通事故だったせいで、自分が死ぬという心の準備ができていなかった。
そのためもあってか、和夫はしばらく、いろいろな所をさまよった。
落ち着いたのは、だいぶ経ってからのことであった。
和夫は生前、決して悪い人間ではなかった。
ところが、世間からはあまり評判がよくなかった。
暴走族のような友人がいた事もあって、近所では不評だったのである。
そんな和夫が落ち着いた場所は田舎であった。
見渡すと山があり、川まであった。
地上ならば、たんぼや畑があるのであろうが、死後の世界では食事を取らないためなのであろうか、そういったものは見当たらないのであった。
和夫は若いためか、喧嘩をしてしまうことがあった。
もちろん、相手は同じような年代の男性である。
その日もちょっとした事で喧嘩になり、激しい念を飛ばし合い、双方とも痛い思いをしていた。
こんな事なら喧嘩なんかしなけりゃ良かった。
と心の中では思うのだが、始まってしまった喧嘩は、双方ともなかなかやめられないのであった。
地上なら、殴ったり蹴ったりするのであろうが、霊魂の世界なので、殴ると考えると、なぜか、相手がまるで殴られたかのように飛んでしまうのである。
これを二人で際限なく繰り返し、共に苦しむのだが、片方がやめるとめった打ちにされそうで、結局やめられないのである。
「もう駄目だ。ここを出たい」
和夫が田舎を出たのはそうした事情があったからである。
やがて、和夫は悪い霊魂の目に止まり、仲間に引き込まれる事になった。
いつの間にか、和夫は喧嘩が得意な大勢の霊魂に取り巻かれたのである。
和夫の苦しみが一層深くなった。
しかし、和夫には生前から正義感のような気持ちがあった。
すぐに喧嘩をするのは確かにいけないが、本人としては、できれば悪い事はしたくないと考えていた。
そんな和夫は悪い霊魂たちの仲間になる気はもうとうなかった。
和夫はある時、逃げ出した。
捕まった後での制裁を考えて決して逃げ出さないのが一般の霊魂であるが、和夫は違っていた。
心の中で、何かが自分を呼んでいる、そんな気がして突っ切ったのである。
和夫はとうとう逃げ切った。
なぜなら、追っ手が迫って来た時、助けが入ったのである。
それは不思議な体験であった。
追っ手の手に落ちると思われた、その瞬間、心の中で自然に沸いてきた言葉があった。
それは和夫自身どうして口走ったのか分からない事であった。
生前、どこかで耳にしたのであろう、何か呪文のような言葉を叫んでいたのであった。
その時である。
空から突然光のようなものが降りて来て、いきなり追っ手の目をくらましてしまったのである。
追っ手は眩しくて目が開けられないらしく、それぞれに散って行った。
和夫は一人になった。
それから一人で長い旅をした。
随分と月日が流れて、ランクが上の世界に入ってから、和夫は知った。
霊力をともなう呪文が上の世界の霊魂を引き寄せ、その輝きの格差により、悪い霊たちが逃げ出したという事を。
和夫が先輩の霊魂に言った。
「地上にいた頃、神なんて馬鹿にしていたけど、呪文に力があるなんて、びっくりしましたよ」
先輩が答えた。
「私も同じだよ。地上にいた頃は宗教とか、修行とかは弱い人がすがるものだと思っていたよ」
「でも、こっちに来て分かったのは、心の弱った人が宗教に入りやすいというだけで、宗教や修行自体は大切だったんだ」
「地上にいた頃から知っていれば、今ごろずうっと上の世界にいたと思うよ」
「同感です」
和夫はどこで呪文を知ったのか、まだ思い出せないのであった。
死後の世界は物質でできてはいないので、私達にとっては不思議な事がたくさん起こるようです。